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ランタイムセキュリティは、どこで実行されているかに関わらず、実行中のプロセスを保護するテクノロジーです。クラウド基盤のセキュリティ対策におけるランタイムセキュリティは、悪意のあるコードや攻撃からアプリケーション、インフラ、データ、ユーザーを保護します。
この記事は、ランタイムセキュリティについて、その種類や、それを実装するテクノロジーやプロダクトについて解説します。
ランタイムセキュリティとは?
ランタイムセキュリティとは、どこで実行されているかを問わず、稼働中のプロセスやアプリケーションを保護するための技術です。クラウド時代のサイバーセキュリティにおける中核的な要素であり、悪意あるコードや攻撃からアプリケーション、インフラ、データ、ユーザーを守ります。
ランタイムセキュリティは静的ファイルのスキャンでは検知できない、実行フェーズで初めて顕在化する脅威を捉える点に本質的な価値があります。コンテナ、サーバーレス、仮想マシン、オンプレのプロセスなど、幅広い実行環境を対象に、動作の異常をリアルタイムに検知・防御します。
ランタイムセキュリティが防御する脅威
マルウェア・悪意のあるコード
依存関係に潜む未知のマルウェアや、実行されるまで意図を隠せる悪意のコードは、従来型のファイルスキャンをすり抜けます。これらは実行時の振る舞いによってのみ検出できます。
コードインジェクション / メモリ破壊
バッファオーバーフロー等によって「実行中のアプリケーションに攻撃コードが注入」されても静的解析では検知できません。ランタイム監視が不可欠です。
不正アクセス・特権昇格
ランタイム監視では、異常なリソースアクセスや特権昇格の試みを検出し、ポリシーに基づき拒否・記録できます。
ゼロデイ攻撃
未知の脆弱性を狙った攻撃では、攻撃ベクトルが不明であることも多く、ランタイムで「結果として現れる異常動作」を検知することが重要です。
その他の不審な挙動
C2サーバーへの通信、権限昇格、難読化スクリプトなど、標的型攻撃の兆候をリアルタイムで検知します。
ランタイムセキュリティは、アプリケーションやプロセスの正常な動作ベースラインを確立し、そこから逸脱した行動をリアルタイムに察知することで、進行中の攻撃を阻止します。
ランタイムセキュリティと他のセキュリティの違い
静的解析(SAST)や動的解析(DAST)はデプロイ前の検査に有効ですが、以下の限界があります:
- 未知の脆弱性は静的解析を通過する
- 悪意の動作がテスト環境では発現しない
- 実行中に注入される攻撃を捉えられない
唯一、本番環境の“動いているアプリケーション”そのものを監視・防御できるのがランタイムセキュリティです。
クラウド環境におけるランタイムセキュリティの重要性
クラウドの複雑性・規模・常時オンライン性により、攻撃者が悪用できる面は増大しています。
- クラウドリソースを無料で悪用(クリプトマイニング等)
- APIやネットワークリソースの不正利用
- サービス停止攻撃の実施
- 企業インフラを利用した二次攻撃
- 機密データ漏洩 による法規制リスクやブランド毀損
クラウドでは可視性の確保が難しく、ログやメトリクスを用いた高度な監視や即時アラートが不可欠です。 ランタイムセキュリティは、クラウド固有のセキュリティ課題に最も効果的に対処できるセキュリティ対策です。
ランタイムセキュリティの種類
アプリケーションランタイム(RASP)
ランタイムアプリケーション自己保護(RASP)は、アプリケーション内部に組み込まれる防御機能であり、開発者がアプリケーション側で実装します。
コンテナランタイム(Kubernetes)
Kubernetes 環境のランタイムセキュリティは、コンテナ化されたコードの悪用からコンテナ基盤だけでなく、ホスト OS や周辺インフラまでを保護します。
また、Pod や Service といった Kubernetes の抽象化と、短命なコンテナ内プロセスの実際の挙動を正しく結び付けるためには、監査ログのイベントにシステムコールレベルの情報を付与し、より深いコンテキストとして扱うことが不可欠です。
クラウドランタイム
AWS、GCP、Azure には、それぞれ独自の監査ログサービスがあり、クラウド上の不正操作や異常動作の検知に活用されます。
ワークロードやサーバーの侵害を把握するには、ホストレベルでシステムコールを監視するのと同じ発想で、これらの監査ログを体系的に収集・分析することが重要です。
ホストランタイム
侵入検知(IDS)やエンドポイント検知(EDR)は、仮想化・コンテナ化プラットフォームを実行するホストマシン、あるいはクラウドワークロードを直接稼働させているマシンに対し、リアルタイムの検知と対応を提供します。
サーバーレスランタイム
AWS Lambda などのサーバーレス機能も悪用リスクを完全には排除できません。短命でブラックボックス化しやすいワークロードだからこそ、予期しない挙動をランタイムで監視しなければ、攻撃者に利用される可能性があります。
ランタイムセキュリティの代表的ツール
ランタイムセキュリティは、実行環境に応じたさまざまなツールによって提供されます。たとえば、Falco は実行中の Docker コンテナや、それらを管理する Kubernetes 環境を保護するオープンソースのランタイムセキュリティツールです。Sysdig Secure は AWS・Google Cloud・Azure などのクラウドネイティブ環境を対象に広範なランタイム保護を提供します。また、SELinux や AppArmor は、ローカルおよびクラウド上の Linux システムで稼働するプロセスに対し、カーネルレベルでランタイムセキュリティを実現します。
ランタイムセキュリティのベストプラクティス
クラウドセキュリティの投資効果を最大化するために、セキュリティチームが実践すべきベストプラクティスがいくつかあります。
1. モニタリングとアラートの最適化
実行中のアプリケーションを正確に監視しつつ、アラートノイズを最小化することが重要です。プラットフォーム設定を最適化し、水平スケール中のワークロードを含む全アプリケーションを監視したうえで、通知を必要な担当者のみに届けることで、アラート疲れや重要なシグナルの見落としを防げます。
2.RBAC(ロールベースのアクセス制御)の徹底
攻撃者がネットワーク内を横移動して被害を拡大するのを防ぐためには、ユーザーや実行中のプロセスがアクセスできるリソースを厳密に制御する必要があります。そのために有効なのがロールベースのアクセス制御(RBAC)です。さらに、タスクに必要な最小限の権限のみを付与する「最小特権の原則(POLP)」を徹底することで、RBAC の効果を一段と高めることができます。
また、セキュリティチームは、自身が守るべきインフラやアプリケーションを深く理解し、定期的にインシデント対応訓練を実施することが重要です。自動化された検知・対応と組み合わせれば、高度に標的化された攻撃に対しても迅速かつ的確な防御が可能になります。
3. 定期的なインシデント対応訓練
セキュリティチームは、自身が保護すべきインフラやアプリケーションを深く理解し、定期的にインシデント対応訓練を行う必要があります。こうした取り組みに自動化された検知・対応を組み合わせることで、高度に標的化された攻撃に対しても迅速かつ確実に対処できるようになります。
Sysdig は、ランタイムセキュリティをクラウドセキュリティに統合します
Sysdig のクラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム(CNAPP)は、コンテナワークロード保護を統合し、クラウド全体のランタイムセキュリティを包括的かつ統一された形で提供します。
Sysdig は AWS、Google Cloud、Azure とネイティブに統合し、スケーラブルな本番環境でのデプロイから実行までコードを一貫して保護します。権限・構成・アプリケーション挙動の変化を監視し、攻撃の兆候を検知すると、関係者に即座に通知し、自動的な緩和・修復を実施することでクラウド環境を最大限に防御します。
Sysdig の大きな強みは、クラウド監査ログとシステムコールレベルの可視性を1つのコンテキストに統合できる点です。
通常、クラウドログは「何が行われたか」は示せますが、「どのプロセスがその操作を引き起こしたのか」までは明らかにできません。Sysdig は Falco に由来するシステムコール監視技術により、このギャップを埋め、クラウド操作イベントとホスト内部の挙動を相関させることで、攻撃の因果関係を正確に突き止めることができます。
このシステムコール起点のランタイム可視化は、コンテナ、サーバーレス、クラウドインスタンスで稼働するアプリケーションの挙動を詳細に監視し、悪意のあるコード、不正アクセス、コードインジェクション、ゼロデイ攻撃などをリアルタイムに検出可能にします。クラウド特有の大規模かつ動的な環境においては、こうしたクラウドネイティブなランタイムセキュリティが不可欠です。
Sysdig Secure、Falco、SELinux は、ランタイムセキュリティを実現する代表的な技術です。Sysdig はクラウドログとシステムコールの相関により、進行中の攻撃を正確に把握し、根本原因の特定と迅速な緩和を可能にします。ゼロデイ攻撃の防御にも高い効果を発揮します。
静的・動的コード分析がデプロイ前の検査を担うのに対し、実際に本番で進行する攻撃を捉えられるのはランタイムセキュリティ――とりわけ Sysdig が提供する “深い可視性” だけです。