Falco Feedsは、オープンソースに焦点を当てた企業に、新しい脅威が発見されると継続的に更新される専門家が作成したルールにアクセスできるようにすることで、Falcoの力を拡大します。

クラウドネイティブ化が加速し、Kubernetes やコンテナ基盤を中核として運用する企業は、これまで以上に「インシデント対応」に追われるようになりました。障害対応だけでなく、攻撃や侵害といった“セキュリティインシデント”の比率が増え、SRE のオンコール負荷は年々高まっています。
こうした背景から、SRE が真っ先に取り組むべき防御戦略として注目されているのが リアルタイム脅威検知 です。 本記事では、なぜ今リアルタイム検知が重要なのか、そしてそれが SRE のオンコール削減とどう結びつくのかを専門的に解説します。
クラウド攻撃の速度が高速化
ログ後追いでは防御できない時代へ
攻撃者は「自動化された攻撃パイプライン」で動いている
クラウドサービスの普及とともに、攻撃者側も CI/CD パイプライン並みに攻撃プロセスを自動化しています。 その結果、初期侵害から lateral movement(水平展開)までが 数分〜数秒 で完了するケースも珍しくありません。
たとえば、SSRF や脆弱なメタデータサービス経由でアクセス権を奪取された場合、その権限を悪用して一気にクラウド全体へ攻撃が広がります。 この瞬間を捉えられなければ、後からログをいくら調べてもすでに手遅れです。
コンテナは短命で証跡が残らない
多くの Pod のライフタイムは 数秒〜数分単位です。 つまり、後からフォレンジックを行う前に、証跡となるワークロードそのものが消滅しています。
また、EKS/GKE のログや CloudTrail を後追いしても、
- 不正な bash 実行
- 外部 C2 サーバへの接続
- 権限エスカレーション
など、攻撃の核心となる「実行時の挙動」は記録されません。
クラウドネイティブ時代の攻撃は ランタイム内で発生し、ランタイム内でしか見えないという特徴があります。
リアルタイム脅威検知が SRE に与える3つの大きな価値
インシデント検知が高速化し、被害の“拡大”を防げる
ランタイムで異常行動を監視できれば、不正なプロセスやコマンド実行をその瞬間に検知できます。 攻撃者が lateral movement を始める前に対処できれば、被害は最小限に抑えられます。
これにより、深夜にクラスタ障害のような大規模インシデントへ発展し、数時間のオンコール対応を余儀なくされる状況を防ぐことができます。
誤検知が減り、“本当に対応すべきアラート”だけが残る
SRE が最も疲弊するのは、内容が不明確でノイズが多いアラートです。 リアルタイム検知では、プロセスの挙動やシステムコールなど 実動作に基づく判断が可能になるため、誤検知を大きく削減できます。
誤検知が減ることで、不要なオンコールの発生による「どうせまた誤検知だろう」という心理的なアラート無視といった悪循環を防ぎ、本当に重大なインシデントへの集中できるようになります。
ランタイム挙動が可視化され、障害対応にも役立つ
リアルタイム検知で得られるプロセス・ネットワーク挙動のデータは、セキュリティだけでなく障害原因の分析にも役立ちます。
例えば、
- Pod の CPU スパイクの原因となったプロセス
- どのマイクロサービスがどこへ通信していたか
- 不審な再起動の直前に何が実行されていたか
これらが瞬時に分かることで、MTTR が短縮し、SRE の業務効率は飛躍的に向上します。
ログ・API 中心の後追い監査では見えない「本当の脅威」
ログは「結果」しか残さない
クラウドログは便利ですが、所詮は「後から生成された結果」であり、
攻撃者の挙動の多くはログに記録されません。
例:
- コンテナ内での apt install
- 外部サーバへのバックドア接続
- 実行時のファイル改ざん
これらはログに残らず、その瞬間の観測が不可欠です。
APIログだけでは異常を判定できない
正当なユーザーが Kubernetes API を呼び出す場合と、 侵害された Pod が API を悪用する場合は、ログ上は区別がつきません。
両者を判定するには、 「どのプロセスから」「どの通信経路で」「どのユーザー権限で」
という リアルタイム相関が必須です。
フォレンジックはコンテナでは「現実的に不可能」
短命なコンテナは異常発生時にはすでに消滅していることが多く、後からディスクを取得して解析する従来型のフォレンジック手法はほとんど機能しません。クラウド/コンテナ環境では、攻撃の痕跡はランタイムでしか存在しない──これが新しい前提条件です。
リアルタイム検知に不可欠なのは“システムコールレベル”の観測
すべての挙動はシステムコールに現れる
ファイル操作・ネットワーク接続・権限変更・プロセス生成など、 すべての動作はシステムコールを通過します。そのため、システムコールを観測できれば 攻撃の意図や実行内容を正確に把握できます。
Kubernetes では DaemonSet 型の監視が本質的な選択肢
ノード単位で観測する DaemonSet 方式であれば、 そのノード上の すべての Pod の挙動を 100% 監視できます。
逆に、サイドカー方式、クラウド API のみのエージェントレス方式では、このレベルの可視性は得られません。
SRE/DevOps の現場で支持されている Falco や Sysdig などは、この方式を採用しています。
クラウドイベントとの相関が“攻撃の意図”を明らかにする
理想的なリアルタイム検知は、システムコール、Kubernetes Audit、CloudTrail / Cloud Logging をリアルタイムで結びつけて分析します。これにより、 「誰が」「どのプロセス経由で」「どの API を使って」「何を実行したか」
が一目で理解できます。
リアルタイム脅威検知はオンコールをどう減らすのか?
初期封じ込めの自動化で“呼び出しが減る”
リアルタイムで異常を検知し、不正プロセスの kill、Pod の隔離、ネットワーク通信の遮断などを自動化すれば、オンコールをかける前に被害を抑えることができます。
ノイズ削減で本当に必要なアラートだけが残る
誤検知が多いとオンコールは増え続けます。 実挙動ベースの検知ならノイズは大幅に減り、 「対応すべきアラート」が明確になります。
MTTR が短縮され、夜間障害の長時間対応が減る
ランタイムの挙動をその場で確認できるため、障害と攻撃の両面で初動調査のスピードが向上します。
まとめ:SREの生産性と組織の安全性の両方を高める鍵
クラウドネイティブな環境では、 攻撃も、異常挙動も、コンテナ内部で瞬間的に起きます。そのため、後追いログ分析、API 監査中心の検知、手動のフォレンジックといった従来型の方法では、本質的な防御ができません。
リアルタイム脅威検知は、 SRE・DevOps のオンコール負荷を減らし、MTTR を短縮し、クラウド基盤全体の安全性を底上げする“最も重要な防御” です。
今後クラウド環境の複雑さが増すほど、その重要性はさらに高まっていくでしょう。