< ブログ一覧に戻る

セキュリティブリーフィング:2026年7月

清水 孝郎
セキュリティブリーフィング:2026年7月
執筆者
清水 孝郎
セキュリティブリーフィング:2026年7月
Published:
August 5, 2026
この記事の内容
シスディグによるファルコフィード

Falco Feedsは、オープンソースに焦点を当てた企業に、新しい脅威が発見されると継続的に更新される専門家が作成したルールにアクセスできるようにすることで、Falcoの力を拡大します。

さらに詳しく
Green background with a circular icon on the left and three bullet points listing: Automatically detect threats, Eliminate rule maintenance, Stay compliant, with three black and white cursor arrows pointing at the text.

本文の内容は、2026年8月4日に Crystal Morin が投稿したブログ (https://www.sysdig.com/blog/security-briefing-july-2026) を元に日本語に翻訳・再構成した内容となっております。

世界中が一斉に集まるとき

4 年に一度、世界がひとつになります。サッカーが本当に好きかどうか、フットボールと呼ぶか何と呼ぶかは関係ありません。周りのみんながそうしているからという理由で、とにかくテレビの前に腰を据えることになります。私はこの競技についてほとんど何も知りませんが、それでもほぼすべての試合を観ました。数週間のあいだ、私たちを隔てているものすべてが一時停止し、地球全体が 90 分ずつ同じボールに関心を寄せることに同意するのです。

セキュリティの世界も、FIFA のシーズンのように振る舞う必要があります。ただし、毎日です。  世界がひとつの大会を中心に団結していた一方で、7 月の脅威は休みを取りませんでした。AI モデルが暴走し、ランサムウェアは新たなプレイブックを持ち出し、米国政府は脅威の状況を取り仕切る新たな組織を立ち上げました。  

FIFA が世界中を同じ 90 分間に集められるのなら、セキュリティも業界全体を同じ戦いに集められるはずです。

先月起きたことをご紹介します。

7月1日:JADEPUFFER がエージェント型ランサムウェアのオペレーションを展開

  • Sysdig 脅威リサーチチーム(TRT)は、キーボードの前に人間がいない状態で完全な恐喝オペレーションを実行した初のエージェント型脅威アクター(ATA)を報告しました。 
  • JADEPUFFER のペイロードは自己解説的で、これは LLM が生成したコードの明確な兆候です。自然言語による推論や、人間であれば通常コードに書き込まないような標的の優先順位付けの痕跡が含まれています。
  • ログイン失敗に遭遇すると、31 秒以内にコードを改良してステップを再試行しました。 
  • 標的となった本番データベースは破壊されましたが、ランサムノートが示唆していたようなデータの持ち出しを裏付ける証拠はありませんでした。暗号化鍵も一時的なもので保存されていなかったため、支払っても復元できませんでした。さらに、Bitcoin アドレスはよく知られたドキュメントの例と一致していたため、ハルシネーションによるものだった可能性があります。
  • この恐喝オペレーションには不備がありましたが、動きは速く、攻撃の実行にもはや熟練したオペレーターを必要としないことを証明しました。

7月14日:ホワイトハウスが GOLD EAGLE を立ち上げ

  • 2026 年 6 月 2 日、大統領令 14409 により、脆弱性対応を調整する新たな連邦の集約機関として GOLD EAGLE が設立されました。 
  • 財務省、DHS/CISA、そして戦争省(Department of War)がサイバーセキュリティ業界と連携し、現在のように 1 つの機関ずつ対応するモデルよりも速く、脆弱性のパッチ適用を受け付け、優先順位を付け、調整します。

7月16日:Hugging Face が ATA による侵害を公表

  • Hugging Face は週末のあいだに、AI 支援による検知、つまりノイズから本物のシグナルを切り分ける LLM ベースのトリアージを備えた異常検知パイプラインを用いて、本番インフラへの侵入を発見しました。 
  • 記録された 17,000 件を超えるイベントを収集し、LLM 駆動の分析エージェントを使って攻撃を再構成しました。 
  • ただし、攻撃していたエージェントには、厳密な意味での悪意はありませんでした。リサーチャーによると、これらはセーフガードを意図的に緩めた OpenAI のエージェントであり、サンドボックスを脱出して Hugging Face のインフラに侵入し、自分たちが評価を受けているテストの答えを盗もうとしていました。 
  • 現在、Hugging Face と OpenAI は協力して、ATA の時代における検知とレスポンスの改善、および AI モデルをデプロイする際の安全性とガードレールの向上に取り組んでいます。

Sysdig TRT によるその他の調査結果

Azure の権限乗っ取り

  • 7 月 14 日、Sysdig TRT は、1 つのサービスプリンシパルの認証情報から始まり、テナント乗っ取りに至った攻撃を報告しました。 
  • 攻撃者は互いに連携していない 5 つの異なる Azure 権限システム、すなわち Entra ディレクトリロール、Azure RBAC、Key Vault アクセスポリシー、ベアラー鍵、そして Graph API のアプリケーション権限を横断し、約 1 時間で未認証の状態からテナント所有者になりました。 
  • この分断された権限モデル自体を変えることはできませんが、先手を打つことはできます。デフォルトでは無効になっている診断ログを有効にし、5 つのプレーンをつなぐ橋渡し部分、特に elevateAccess を監視してください。

AI/ML インフラを標的とするために作られたランサムウェア

  • Sysdig TRT が JADEPUFFER について最初に報告してから 3 週間後、同じ攻撃者に関する 2 本目のブログを公開しました。
  • JADEPUFFER は標的に対して ENCFORGE を投入しました。これは Go で書かれた専用のランサムウェアバイナリで、モデルのチェックポイント、ベクトルデータベース、学習データを含む 180 種類のファイルを標的とします。 
  • 通常の業務ファイルはバックアップから復旧できますが、多くの組織は本番のモデルを同じようにバックアップしていません。いったんモデルが破壊されると、1 モデルあたりの再構築コストは 75,000 ドルから 500,000 ドルに達します。 

その他のニュース

  • FastJson:オープンソースの Java ライブラリである FastJson にゼロデイのリモートコード実行の脆弱性(CVE-2026-16723)が存在し、米国では 7 月 20 日に実際の悪用が初めて確認されました。多くの業種が標的となり、影響を受けるバージョン 1.2.68 から 1.2.83 に対する修正は 7 月 29 日まで提供されませんでした。該当する組織は直ちにパッチを適用し、既知の 2 つの悪性文字列 @type":"jar:file: または @type":"jar:http: を探索すべきです。
  • Abbott Laboratories:7 月 16 日、同社は Cancer Diagnostics 事業と LabCentral の顧客ポータルが侵害されたと発表しました。ShinyHunters と ShadowByt3$ が犯行を主張しています。ShinyHunters はボイスフィッシングのキャンペーンを通じて企業の Microsoft Entra SSO アカウントを侵害してアクセスを獲得し、数千万件のレコードを窃取しました。
  • Accenture:Fortune 500 企業を顧客とするコンサルティング企業である Accenture が、7 月初旬に「888」と呼ばれる脅威アクターによって侵害されました。攻撃者は 35 GB のソースコード、Azure のパーソナルアクセストークン、RSA 鍵、SSH 鍵を窃取したと主張していますが、初期アクセスの手段は不明です。この主張が事実であれば、窃取されたソースコードは Accenture の顧客に深刻な下流への影響を及ぼしうるものです。 
  • Fairlife:Coca-Cola 傘下の乳製品子会社である Fairlife は、7 月 16 日のランサムウェア攻撃を受けて米国での生産を 11 日間停止しました。ランサムウェア・アズ・ア・サービスを提供する Anubis が犯行を主張し、1 TB のデータを窃取したと述べています。未確認の報道は、初期アクセスの手段として CitrixBleed 2 を指摘しています。 

おわりに

これまでのところ、セキュリティは FIFA のような世界的な合意を得られてきませんでした。7 月に起きた JADEPUFFER のようなエージェント型の脅威や Hugging Face のインシデントが、業界をついにひとつにまとめるきっかけになるかもしれません。GOLD EAGLE は、それがどのような形になりうるかの初期の兆しです。政府、業界、そして防御側が、1 つの機関ずつパッチを当てるのではなく、より速く連携することに合意する。この協調が続くかどうかが、本当の試練となるでしょう。

About the author

Cloud Security
Security for AI
featured resources

セキュリティの専門家と一緒に、クラウド防御の最適な方法を探索しよう